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関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Wu, G.*; 北島 義典*
Surface Science, 593(1-3), p.310 - 317, 2005/11
被引用回数:2 パーセンタイル:11.66(Chemistry, Physical)回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)を用いて、分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した。凝縮塩化ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する。凝集分子ではCl 2s*共鳴励起でClイオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された。下層による緩和に表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから、この配向効果には電荷中性化緩和が重要な役割を果たしている。*共鳴励起では偏光依存性を全く示さなかった。このことから離れた原子を内殻励起しても「遠い」結合には直接解離が起こらず、おもに2次電子により解離が引き起こされるものと考察する。
池浦 広美*; 関口 哲弘; 馬場 祐治; 今村 元泰*; 松林 信行*; 島田 広道*
Surface Science, 593(1-3), p.303 - 309, 2005/11
被引用回数:5 パーセンタイル:26.14(Chemistry, Physical)われわれが近年開発した脱離イオン種をプローブとする(XAFS)分光法の基礎データ拡充のため、ホルムアミド分子の凝縮系試料の実験を行った。分子内のC, N, O元素におけるXAFS測定が可能でありC-H, N-H結合を区別して最表面の配向構造分析することが可能であることが示された。さまざまなX線励起エネルギー,生成物種,励起偏光角度について測定した飛行時間質量スペクトルから生成物が放出される際の初期運動エネルギーを求め、イオン脱離機構を調べた。運動エネルギーは発生メカニズム(直接解離/間接解離機構)を大きく反映すること、また多成分存在することが示された。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 144-147, p.437 - 441, 2005/06
被引用回数:3 パーセンタイル:17.62(Spectroscopy)表面における配向を化学結合種ごとに分析する新しい実験手法を開発した。偏光NEXAFS法はX線吸収スペクトル測定により表面の結合状態や配向方向を決定する手法である。軟X線領域ではX線吸収測定のためには通常全電子収量を測定する。本研究においては放射光励起に起因する脱離イオンの質量分析を行い、X線励起エネルギー依存性及びその偏光依存性を測定することにより個々の化学結合について配向解析を行う実験を試みた。系としては核融合第一壁において重要とされる重水素イオン照射グラファイトを用い、脱離するH及びDイオンを観測した。また高配向グラファイト単結晶を出発物質として使い照射による配向の乱れを観測した。電子収量はC-HとC-Dの平均構造を与えるのに対し、D収量は照射により生じたC-D結合周辺のみの局所構造を与える。Hは未照射領域のC-H結合の情報を与える。
池浦 広美*; 関口 哲弘; 小池 正記*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 144-147, p.453 - 455, 2005/06
被引用回数:15 パーセンタイル:56.91(Spectroscopy)ZEP520はポジ型電子照射レジスト材料であり、半導体微細加工において最良の空間分解能を与えている。そのため近年PMMAに代わりゾーンプレート素子等のデバイス材料に使われ始めている。さらなるパターンサイズ微細化のためにはラインエッジラフネス,ポリマー凝集など課題を抱えている。本研究においてはZEP520の基礎物性を得ることを目的とし、直線偏光放射光による内殻励起分光を用い、ZEP520/Si(100)の薄膜特性とX線照射効果を調べた。脱離イオン検出による表面偏光解析によりC-Cl結合は最表面においてのみ配向(40)を示した。Cl 1s内殻励起によりC-Cl結合が顕著に切断されCl元素が排除される。Si 1s励起により基板との放射線化学反応生成物が増加する。生成物収量の励起エネルギー依存性測定により反応生成物(SiCHOCl)の電子構造,生成機構を考察した。
木崎 寛之*; 和田 眞一*; 佐古 恵里香*; 隅井 良平*; 輪木 覚*; 漁 剛志*; 関谷 徹司*; 関口 哲弘; 田中 健一郎*
Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena, 144-147, p.447 - 451, 2005/06
被引用回数:5 パーセンタイル:27.35(Spectroscopy)光刺激イオン脱離(PSD)法により放射光励起プロセスにおける内殻電子励起後の電子緩和,解離,脱離に至る機構がより詳細に調べられてきた。放射光のエネルギー可変性を使い内殻共鳴励起を引き起こすことにより特定の化学結合の切断を誘起できる可能性が示されて以来、放射光励起プロセスはさらに大きな興味がもたれてきた。本研究は放射光の励起エネルギー可変による選択性に加え、Au(111)表面上に制御して吸着された自己組織化(SAM)配向膜の結合軸にX線の偏光ベクトルを一致させることによりさらなる選択励起を目指した。ランダム配向であるPMMAポリマー薄膜に比較し、SAM膜は約4倍高い反応選択性を示した。実験結果は直接解離過程と2次電子による間接過程が関与している反応機構により考察された。
関口 哲弘; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.
Free Electron lasers 2003, p.II_69 - II_70, 2004/00
強い自由電子レーザー(FEL)の出現によりこれを照射光源とした光化学反応や光電子顕微鏡など「2次過程」を利用した分光研究が行われはじめ注目を集めている。特にFELのパルス特性は飛行時間質量分析法を使ううえで非常に有利な特性である。軟X線を固体表面に照射すると表面を構成する分子などが解離しフラグメントイオンとして脱離する。フッ素化した高配向性グラファイト材料を試料としてパルス放射光軟X線と飛行時間質量分析を組合せた照射実験に関して報告する。特に入射するX線の偏光角度を変えることにより特定の結合角度を持つ吸着分子を選択的に励起し、さらに脱離分子の運動エネルギー分布の測定を行うことによりフラグメント脱離の機構を調べた。通常の電子収量法によるNEXAFSスペクトルの偏光角度依存性,イオン収量法による方法,XPSスペクトルから得られる表面構造についても報告する。
関口 哲弘; 池浦 宏美*; 馬場 祐治; 下山 巖; Nath, K. G.
Photon Factory Activity Report 2002, Part B, P. 80, 2003/11
本件は放射光研究施設の課題報告である。放射光エネルギーを特定原子の内殻軌道電子の共鳴励起準位に合わせることにより励起された原子近傍の結合解裂が促進される。これは「サイト選択分解」と呼ばれ、気相系で数多く研究されている。本研究では分子が表面に吸着した際、サイト選択性がどのように変化するかを調べた。分解反応は基板により影響を受けると予想される。そのため回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)と放射光の偏光性を組合せた実験手法を開発し、各吸着角度で分解反応がどのように異なるかを調べた。シリコンまたは金基板上に水,有機酸類,アルデヒド類,ベンゼンハライド類を吸着した系について実験を行った。全ての試料系でサイト選択反応が起こるとき顕著な吸着角度依存性が観測された。また非サイト選択的分解(励起サイトから離れた結合の解裂)は吸着角度に依存しない。選択的解離は直接分解に由来し、非選択的解離は2次電子により引き起こされると結論した。
関口 哲弘; 池浦 広美*; 馬場 祐治
Surface Science, 532-535(1-3), p.1079 - 1084, 2003/06
最近開発された回転型飛行時間質量分析装置(R-TOF-MS)と直線偏光放射光を用いて、分子固体表面最上層で起こる結合解離と脱離過程における分子配向効果を研究した。講演では凝縮ギ酸,ホルムアミド,ベンゼンの質量スペクトル,電子収量法,イオン収量法による高分解能NEXAFSスペクトルの偏光角度依存性を報告する。凝集ホルムアミド分子ではC1s *共鳴励起でHイオン収量が増加する現象に関して顕著な配向効果が観測された。下層からの励起緩和には表面上の分子の結合方向が大きく影響を受けることから、この配向効果には内殻軌道励起による直接解離過程と電荷中性化緩和の両方が起こっていることが重要な役割を果たしていると結論された。また、あるイオン種は偏光依存性を全く示さなかった。例えば、HCONDにおいてC1s励起によるDイオン収量がそうであった。このことから内殻電子励起しても励起された原子から「遠い」結合には必ずしも直接的な解離は起こらず、解離が起こるとすれば2次電子により引き起こされるものと結論した。
和田 眞一*; 隅井 良平*; 漁 剛志*; 輪木 覚*; 佐古 恵理香*; 関口 哲弘; 関谷 徹司*; 田中 健一郎*
Surface Science, 528(1-3), p.242 - 248, 2003/03
被引用回数:45 パーセンタイル:84.06(Chemistry, Physical)内殻軌道電子が特定原子に局在しているため放射光エネルギーを共鳴励起準位に合わせることにより励起された原子近傍の結合解裂が促進されると期待される。ポリメチルメタクレートポリマー,水素置換メチル基,重水素置換メチル基,エチル基を持つ硫黄系自己組織化膜(SAM)を金基板に吸着した試料を放射光照射した。パルス放射光を組合せた回転型飛行時間質量分析法により生成物を測定した。全ての分子において側鎖だけを選択的に光分解できることがわかった。また放射光の偏光角度を SAM分子の主骨格の角度に合わせたとき反応選択性が最も向上するという新しい現象が見いだされた。
和田 眞一*; 佐古 恵理香*; 隅井 良平*; 輪木 覚*; 漁 剛志*; 関口 哲弘; 関谷 徹司*; 田中 健一郎*
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 199, p.361 - 365, 2003/01
被引用回数:11 パーセンタイル:59.38(Instruments & Instrumentation)内殻軌道電子が特定原子に局在しているため放射光エネルギーを共鳴励起準位に合わせることにより励起された原子近傍の結合解裂(「サイト選択光分解」)が促進されると予想される。ポリマー(ポリメチルメタクレート,PMMA)薄膜,PMMAの類似モノマーであるメチルイソブチル酸エステルの凝集薄膜及びPMMAに類似した自己組織化単分子(SAM)薄膜(HS(CH)COOCH)の放射光照射を行い分子環境の変化及び光偏光角度の変化が及ぼす分解反応の選択性への影響を調べた。ポリマー薄膜と単分子薄膜はサイト選択分解が起こるのに対し凝集薄膜では選択分解は起こらない。またSAM膜では顕著な偏光角度依存性が観測された。分子環境が反応選択性に大きく影響することが見いだされた。
馬場 祐治; 関口 哲弘; 下山 巖
Surface Review and Letters, 9(1), p.77 - 83, 2002/02
被引用回数:4 パーセンタイル:26.13(Chemistry, Physical)生体分子に対するX線照射効果を分子レベルで明らかにする目的で、イオウのK殻(S 1s)付近のエネルギーの放射光軟X線を固体ペレット状のアミノ酸(シスチン,システイン,メチオニンなど)に照射した時のX線吸収スペクトル及び分解,脱離イオンを調べた。いずれの分子においても、内殻励起後の二次電子による分解,脱離効果は小さく、イオウ1s電子の内殻励起による直接解離により分解イオンが表面から脱離することがわかった。またジスルフィド結合(-S-S-)をもつシスチンでは、S 1sからS-S-結合部の反結合性シグマ軌道への共鳴励起により、高い効率でS+イオンが脱離することが明らかとなった。これらの結果から、生体分子へのX線照射による分解、脱離に関しては、内殻軌道から価電子帯の反結合性軌道への共鳴励起が極めて重要な効果を与えることが明らかとなった。
関口 哲弘; 関口 広美*; 馬場 祐治
Surface Science, 454-456, p.363 - 368, 2000/05
被引用回数:23 パーセンタイル:72.46(Chemistry, Physical)シリコン(Si)半導体上における簡単な炭化水素分子の表面科学反応はSiC薄膜生成などの応用面からの要請も相俟って活発に進められている。本研究においては室温及び低温(93K)のSi基板上にアセトン((CH)CO)を吸着させた系について放射光からの軟X線を励起光源として起こる解離反応を調べた。アセトンは放射光の励起エネルギーを変えることにより、分子中の(-CH3とC=Oの)二種類の炭素原子を選択して内殻励起することができると考えられている。放射光照射により生じるイオン脱離生成物を四重極質量分析により検出した。単分子~約50分子吸着層についてフラグメント収量の励起光エネルギー依存性を測定した。実験結果としてはメチル基(CH)の炭素が内殻励起された場合のみ、CH(n=0-3)イオンが顕著に生成することがわかった。この結果はこの共鳴励起でC-C結合が特に顕著に切断されていることを示唆している。
馬場 祐治; 関口 哲弘
Journal of Vacuum Science and Technology A, 18(2), p.334 - 337, 2000/03
被引用回数:4 パーセンタイル:23.01(Materials Science, Coatings & Films)SiO薄膜生成の原料物質として使われているシリコンアルコキシド(Si(OR))について、放射光軟X線を照射した時の光分解挙動を調べた。低温でSi(100)表面に多層吸着したテトラメトキシシラン(Si(OCH))にSi K-吸収端領域の軟X線を照射した時の脱離イオンは主としてSi(OCH)(n=2, 3, 4)であった。一方、CK-吸収端及びOK-吸収端領域の軟X線照射を照射した時の脱離種は、ほとんどがCHであった。これは内殻励起状態がC及びO原子に局在したまま結合解裂が起きていることを示しており、C-O結合の選択的切断によりSiO層が形成できる可能性を示唆する結果が得られた。
吉野 洋子; 財部 健一*; 石井 真史*; 片山 芳則; 下村 理
Physica B; Condensed Matter, 273-274, p.781 - 783, 1999/12
被引用回数:1 パーセンタイル:8.73(Physics, Condensed Matter)DX状態は強く局在している。この性質は、局在している電子が空になった内殻に緩和する過程を観察することによって調べることができる。われわれは、放射光を用いることによって、AlGaAs:Se (x=0.33,(cm))の二つの異なった光イオン化の過程を見いだした。この二つは、以下の過程に仮に同定される。一つは、内殻電子の伝導帯(CB)への直接遷移とそれに続くDXセンターの電子の空になった内殻への捕獲でありK-edge、 もう一つはDXセンターの電子のCBはのオージェイオン化とそれに続く他の電子の空になった内殻への捕獲である K-edge。
馬場 祐治; 関口 哲弘
Surface Science, 433-435, p.843 - 848, 1999/00
被引用回数:6 パーセンタイル:38.09(Chemistry, Physical)電子物性が全く異なる金属、半導体及び絶縁体表面に単層物理吸着したCCl分子に放射光軟X線を照射した時の解離・脱離反応過程の違いを調べた。絶縁体(SiO)表面ではCl 1s励起による主な脱離イオン種はCl及びCClであるのに対し、金属(Cu)及び半導体(Si)表面からの脱離イオン種は、Clのみであった。これらの事実とオージェ電子スペクトルの測定結果から次の2点を明らかにした。(1)軽い原子イオン(Cl)の脱離は、表面における伝導電子の遮蔽効果(スクリーニング効果)に影響されない速いCCl結合解裂に起因する。(2)分子イオン(CCl)は質量が大きいため移動速度が遅く、金属、半導体表面ではスクリーニング効果により励起状態(イオン化状態)が消失するため脱離しない。
馬場 祐治; 吉井 賢資; 佐々木 貞吉
Surface Science, 402-404, p.115 - 119, 1998/00
被引用回数:4 パーセンタイル:27.59(Chemistry, Physical)Cu(100)表面に単層及び多層吸着したCCl分子に、Cl1s領域の放射光軟X線を照射した時の脱離フラグメントイオンを測定した。単層吸着では、脱離イオン種はClのみであり、これはCl1s共鳴励起後のスペクテータオージェ遷移に伴う速いC-Cl結合解裂に起因する。一方、多層吸着の場合は、分子イオン(CCl)の脱離も起こり、その脱離強度はX線の吸収量に比例する。このことから、脱離速度が遅い重い分子種の脱離は、オージェ遷移後の二次電子の効果により起こることを明らかにした。
大野 新一; 古川 勝敏
Bulletin of the Chemical Society of Japan, 58(4), p.1100 - 1104, 1985/00
被引用回数:3 パーセンタイル:31.02(Chemistry, Multidisciplinary)重イオン衝撃に特異な化学反応を調べる目的で、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムを室温で、ガンマ線,プロトン線,アルゴンイオンビームで照射し、発生気体の分析,スパッタイオンの分析,照射後試料のEPR測定を行い、450keV-1.8MeVエネルギーのアルゴンイオン照射の場合にのみ出現するEPRスペクトル(g=2,線幅100-300G)が交換相互作用するFeクラスターに基づくことを報告。その形成機構として、イオン衝突により運動エネルギーを得ると同時に内殻励起されたFeが配位子解離を起こすことを考察した。
大野 新一
放射線, 11(3), p.75 - 82, 1985/00
低エネルギーイオン衝撃により物質中の原子・分子は、内殻励起や多重励起などの高い非弾性衝突をうける。さらに低エネルギーの領域では、弾性衝突による原子変位をうける。これらの衝突過程に続く化学反応を説明し、現在までに得られている研究成果をレビューする(依頼寄稿)。